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第10回応氏杯決勝第3局
一力、日本勢19年ぶり念願の優勝

2024 年 09 月 09 日掲載

第10回応氏杯決勝第3局 一力、日本勢19年ぶり念願の優勝

9月8日、第10回応氏杯決勝五番勝負の第3局が上海市宝山区の途易ブルーホテルで行われ、一力遼九段が黒番で237手の末、謝科九段に勝利し、3連勝で自身初の世界タイトルを手にしました。これは日本棋院にとって2005年の張栩九段以来、19年ぶりとなる世界大会優勝となります。

好調の一力九段

8月に重慶で行われた五番勝負の第1局と第2局で、一力九段は連勝し、謝科九段を追い詰めました。その後、日本国内の棋戦に戻った一力九段は、阿含桐山杯決勝や王座戦挑戦者決定戦でも好調を維持していました。さらに名人戦七番勝負では挑戦者として登場し、芝野虎丸名人に対して2連勝を果たしています。王座戦挑戦者決定戦では芝野九段に敗北し、唯一の黒星となりました。

第10回応氏杯決勝第3局 一力、日本勢19年ぶり念願の優勝

白熱の対戦

第3局は一波乱万丈の展開となりました。序盤は右下隅での戦いから始まり、謝科九段が鋭い手を放ち、局面をリードしました。中央から右辺への展開でも謝科九段は巧みな打ち回しを見せ、大きな白地を築きましたが、形勢は僅差のまま推移しました。

昼食休憩を挟んで再開された対局では、謝科九段が致命的なミスを犯し、一力九段に決定的な分断のチャンスを与えてしまいました。白の大石は黒に封じ込められ、生命線を断たれる危機に陥りました。

大逆転の展開

しかし、一力九段も一度はミスを犯し、謝科九段にチャンスが訪れます。白の大空間を確保しつつ、黒の大石を狙う局面で、謝科九段はさらなるミスを重ね、最終的に一力九段が勝利を収めました。

コメント

一力九段は、「途中は形勢が苦しく、正直厳しいかなと思っていましたが、最後まで諦めないように心がけていました。優勝できるとは思っていなかったので、今は本当にほっとしています。日本から応援してくださった皆さんに心から感謝を伝えたいです」と、喜びの気持ちを語っていました。

一力九段の師匠である宋光復九段は、ホテルの別の部屋で対局の様子をテレビで見守っていました。一力九段の勝利が確定すると、彼は手で顔を覆い、喜びをかみしめました。

宋九段は「小学2年生からの門下生として、長い年月を共に過ごし、いろいろな苦労をしてきました。彼の努力が報われて、感無量です。これからも彼はさらなる高みを目指すと思いますが、その成長を見守っていきたいです」と話しました。また、「泣き虫だった少年が、学業や経営との両立の中で、数多くの試練を乗り越え世界一になったことを誇りに思います。これからも全力で走り続けてほしいですが、どうか体調には気をつけて」と、温かいメッセージを送りました。

日本棋院の武宮陽光理事長は、「二連勝後のプレッシャーは非常に大きかったと思いますが、その重圧の中で偉業を成し遂げたことに、心から称賛の意を表します。特に日本棋院創立100周年という節目の年に、ファンが長く待ち望んでいた国際棋戦優勝を達成できたことは感慨深いものです」と、感謝と称賛の言葉を贈りました。

特設ページ:

第10回応氏杯世界選手権

関連棋譜:

【第10回応氏杯決勝五番勝負第3局】(黒)一力遼九段 対 謝科九段(白)

第10回応氏杯決勝第3局 一力、日本勢19年ぶり念願の優勝
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