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囲碁は認知科学研究の理想的モデル
囲碁と脳の関係
2025 年 06 月 04 日掲載
囲碁と脳の関係 囲碁は認知科学研究の理想的モデル

囲碁棋士が碁盤上の「地(ジ)」の広さを目測で見積もる能力が、通常の数感覚の高度な形であります。プロ棋士と一般人を比較して脳の働きをfMRI(機能的磁気共鳴画像法)で分析しました。

難しい形勢判断で「右側小脳」が活性化

MRI装置の中で2枚の碁盤の画像を同時に見せられ、「どちらの地が広いか」を即座に判断する課題を行いました。分かりやすい局面では、数的認知に関与する大脳皮質の領域が主に活性化しましたが、差が小さく判断が難しい局面では、特に右側の小脳が顕著に活性化していることが分かりました。

さらに注目すべきは、この小脳の活性度が高いほど、囲碁を学び始めてからプロ棋士になるまでの期間が短いという傾向が見られたことです。これは、長年「運動制御」や「バランス」に関わるとされてきた小脳が、高度な数的判断や直感的意思決定にも関与している可能性を示唆する重要な発見です。

囲碁の熟達過程と小脳活性

初心者から中級者レベルまでは、単純なルール習得や石の手順を覚えるだけでも脳全体が活性化します。しかし、ある時点で一気に“囲碁的直感”を獲得する過程において、小脳が中枢的な役割を果たします。

プロ棋士になれる人は、囲碁盤上の典型的な“地の分布パターン”を大量に高速で脳内にインプットし、小脳がそれらを統合できるようになる速度が速いです。

認知症予防

囲碁は対局相手との対話や感情のやり取りが伴うため、社会的交流や情動制御の側面でも効果があります。社会的交流が豊かなほど、うつ状態や孤立感の軽減につながり、ひいては認知症発症リスクを低減すると報告されています。また、適度な緊張感を楽しむことでストレスホルモン(コルチゾール)の分泌をコントロールする効果も示唆されており、これも神経細胞保護に役立つと考えられます。

継続性が鍵であること

囲碁の効果を最大限に引き出すためには、継続的なプレイが重要です。定期的に囲碁を楽しむことで、脳の活性化や認知機能の向上が期待できます。特に高齢者にとっては、囲碁を通じて社会的なつながりを持ち続けることが、認知症予防に寄与する可能性があります。まずは週に1~2回程度、短時間でも継続して対局を行う習慣をつけると良いでしょう。対戦相手がいない場合は、オンライン対局やコンピュータ相手の対局ソフトを利用する方法もあります。

囲碁は認知科学研究の理想的モデル

今回の研究は、人間の数的感覚がどのように発達し、専門家レベルの直感的判断がどの脳回路で働いているのかを示す重要な手がかりです。特に囲碁という伝統的ゲームが、脳の認知機能の研究において非常に有用なモデルとなることを示しています。数学教育、認知発達研究、AIの直感的判断モデルの開発など、幅広い分野への応用が期待されます。

囲碁は最も難解で知的なスポーツとされており、その直感的判断と脳機能の関係を解き明かした研究は、大きな意義を持ちます。