TOP | ニュース一覧 | 仲邑菫三段「この道で生きてきてよかった」
3月韓国移籍
仲邑菫三段「この道で生きてきてよかった」

2024 年 02 月 20 日掲載

3月韓国移籍  仲邑菫三段「この道で生きてきてよかった」

囲碁の中学生棋士・仲邑菫三段(14)の日本最後の対局となる第35期女流名人戦リーグ7回戦(最終戦)が19日、東京・千代田区の日本棋院で打たれ、仲邑が牛(にゅう)栄子扇興杯(24)相手に170手までで白番中押し勝ちし、日本での対局を勝利で納めた。今月末に韓国へ引っ越し、15歳の誕生日である3月2日から韓国棋院に所属する。

対局場に現れた仲邑は、「(韓国へ)気持ちを切り替えて頑張ろうと思って」と髪をバッサリ。覚悟を胸に“最後の対局”を勝利で飾った。

最後まで危なげのない一局だった。「(プロ入り直後は)若かったのでメチャクチャやってたんですが、今はそこまでメチャクチャはやらないようにしています」と14歳とは思えない分析力で、同リーグ5勝1敗に。2位以上が確定した。1位の藤沢里菜女流本因坊が最終戦に敗れると星取りで両者が並ぶが、仲邑は韓国に渡るため、プレーオフは行わない。

19年、日本棋院が新設した「英才枠」第1号として、当時最年少の10歳0か月でプロ入り。今月5日の女流棋聖戦三番勝負第3局では上野梨紗二段(当時)に敗れ、タイトルを失冠。無冠となり、涙を流した。約5年を振り返り「いろいろなことがありすぎてあまり覚えてないですが、とても楽しかった」と最後は笑って海を渡る。

「世界で戦える棋士になるために」―。世界チャンピオンを多数輩出し、中国と共に2強を形勢する強豪韓国への移籍は14歳の大きな決断だ。「人生のほとんどが囲碁。囲碁を通じて国際的な友達もできましたし、この道で生きてきて(普通は)経験できないことをできているので、よかったと言えると思います」と冷静にこれまでの囲碁人生を肯定し、さらなる飛躍を目指す。

2月末には韓国に引っ越す。高校進学は「考えたことなかったです」と囲碁一本に絞る。韓国で迎える誕生日には「焼き肉とキムチチゲを食べたい」と希望。いつの日か日本に帰って「囲碁界を盛り上げられたらな」と未来も描く。

小学生のころはシャイで、報道陣の質問に小さな声で一言ずつしか答えられなかった“菫ちゃん”。この日の取材ではスラスラと的確な言葉が続くようになった。報道陣から「成長の余地はあると思いますか?」と問われ「なかったら結構やばいですよね」と笑顔で返す。盤上盤外で絶賛成長中だ。

2019年4月のプロ入りから4年11カ月。3月2日に韓国棋院に移籍する仲邑三段は「いろいろなことを経験させてもらって、すごく内容の濃い5年でした。この道で生きてきてよかった」などと語った。主な一問一答は以下の通り。

――この日の対局を振り返って。

◆序盤であまり知らない形になって、ずっと良い勝負かなと思っていましたが、相手がミスして中盤ではっきり良くなったかなと。

――国内最後の対局を白星で終えて。

◆次に向けて良かったなと思います。

――意識するところはあったか。

◆あまり意識せずに普段通り打ちました。

――2019年4月にプロ入りし、4年11カ月の棋士生活を送ったが、どのような時間になったか。

◆10歳で入段していろいろなことを経験させてもらって、すごく内容の濃い5年でした。本当にいろいろなことがありすぎてあまり覚えていませんが、とても楽しかったです。

――その中でも特に印象に残っていることは。

◆どれも印象に残っていますが、やっぱりタイトルを取れた碁はうれしかったですし、(22年の国際棋戦の)三星火災杯で勝てたのも大きかったです。

――この日の勝利で164勝88敗となった。この成績をどう捉えるか。

◆やっぱり、相当勝てたのかなと思います(笑い)。

――3月2日に韓国棋院に移籍するが、韓国でどのような棋士になりたいか。

◆韓国はもっと厳しくなると思うので、もっと努力して強くて尊敬される棋士になりたいです。

――日本の棋士で一番戦いたい棋士は。

◆上野梨紗(女流棋聖)さんとは次に打った時に絶対に勝てるように努力したいと思います。

――仲邑三段にとって、囲碁とはどういうものになっているのか。

◆人生のほとんどが囲碁だと思いますが、その中でいろいろな経験をできましたし、囲碁を通じて国際的に友達とかもできました。この道で生きてきて、経験できないことを経験できているのでよかったなと思います。

――入段当初と比べて碁のスタイルや棋風が変わったと思うが、韓国に行ってそれがまた変わる可能性は。

◆入段したころは若かったので、めちゃくちゃだったんですけど、今はそこまでめちゃくちゃはやらないようにしています(笑い)。

――まだまだ成長の余地があると思うか。

◆なかったら、結構やばいですね(苦笑)。

――いつ韓国に引っ越しするのか。

◆今月の終わりですね。

――日本には戻ってくるのか。

◆もっと強くなって、いつかは分からないが、日本に帰って囲碁界を盛り上げていけたらなと思います。

――今後の目標は。

◆近い目標では、韓国の女流タイトルを取りたいですし、最終的には中国の甲級リーグに出場する選手になりたい。

――3月2日の誕生日を韓国で迎えるが、欲しいものはあるか。

◆焼き肉とキムチチゲを食べます(笑い)。