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大森らん初段、稲葉かりん初段、2人に聞く
仲邑菫初段で注目「女性囲碁棋士」どんな人
2019 年 05 月 25 日掲載
仲邑菫初段で注目「女性囲碁棋士」どんな人 大森らん初段、稲葉かりん初段、2人に聞く

大阪出身の仲邑菫(なかむらすみれ)初段(10)が史上最年少でプロ入りするなど、今年の囲碁界は活気づいている。仲邑初段の登場で、女性棋士の存在も改めてクローズアップ。そこで、日本中が注目した仲邑初段とのデビュー戦を制した日本棋院関西総本部の大森らん初段(16)と、4月から囲碁のテレビ番組に出演中の関西棋院の稲葉かりん初段(20)、活躍が期待される2人の女性棋士にインタビューした。

「緊張しましたが、表に出ないように何とか頑張りました」とデビュー戦を振り返る、大森らん初段(16)。それもそのはず。報道陣約40社100人が集まり、注目を集めたデビュー戦だった。平成31年4月22日、史上最年少でプロ入りした同期、仲邑初段との竜星戦。仲邑初段の積極的な攻めに的確に応じて中盤で優勢を築き、そのまま押し切った。

終局後の記者会見で、2人の今後の抱負が対照的だった。仲邑初段が「世界で戦える棋士になりたい」と語ったのに対し「楽しく過ごせたら」。「人生楽しいほうがいいですから」と、屈託のない笑顔を見せる。

広島県江田島市出身。碁は3つ年上の兄の影響で、保育園のころに覚えた。小学1年生になると教室に通った。さらにもう1カ所教室に通うようになり、週4日は囲碁を勉強した。

プロを目指すことになったのは中学生の頃。県出身の吉川一・三段(29)や後に師匠となる山本賢太郎五段(38)の姿をみて「好きなことを職業にしていて、楽しそうだったから」。中学2年生で日本棋院関西総本部の院生になり、広島と大阪を行き来する生活を送った。中学卒業後は、大阪で一人暮らしをしながら碁に専念。棋士が参加する研究会に熱心に出席し力をつけた。昨年11月、「女流特別採用推薦棋士」としてプロ入りすることが決まった。

プロ入りの背中を押してくれた母親からは、毎日「今日は何を食べた?」と連絡がある。「ありがたいです」。棋士としての道はこれから。「囲碁ファンを楽しませられるプロになりたいです」とはつらつと答えた

「たくさんあるカメラのどれを見ればいいのかなってキョロキョロしてしまいます」

笑顔で話すのは、稲葉かりん初段(20)。毎週日曜日に放送しているNHKEテレの囲碁番組「囲碁フォーカス」に、講師役の円田秀樹九段(52)の聞き手として起用され、4月から出演している。なれないテレビ出演だが、ふとしたときの真顔が「怖い」のではないかと思い、「口角を上げて頑張っています」

囲碁を始めたきっかけがユニークだ。4歳のころ、おもちゃ屋でミニ碁盤を見つけた。「これがほしいと熱心にお願いしたのだと思います。何でほしいと思ったんでしょうねえ…。オセロと間違えたのかな」。

しかし、両親ら身近な人は囲碁のルールを知らなかった。父が入門書を買ってきてくれ、一緒に学んだ。関西棋院の囲碁サロンや子供向けの教室に通い、腕を磨くうち、プロになりたい気持ちが芽生えていった。

小学6年生から中学1年生まで、1人で韓国へ修行に。「このままではプロになれないと思いました。厳しいところに身を置かねばと」。韓国を代表するトップ棋士、李世●(イ・セドル)九段が通ったソウルの道場で、朝から晩まで囲碁に打ち込んだ。

帰国後は、プロを目指す関西棋院の院生に。そして高校2年生で初段となり、プロ入り。「でもまだ目立った活躍がありません。十代の若い人たちに負けないようにしなければ」と表情を引き締める。

囲碁のどんなところが好きなのかと尋ねると、「答えがはっきりしないところです」と謎めいた答えが返ってきた。