日本棋院、棋士とファンをつなぐ「普及休場制度」を創設
日本棋院は9月3日、経営改革報告の第10回として、棋士が一定期間公式戦から離れ、囲碁の普及活動に専念できる新たな「普及休場制度」を創設したと発表しました。
今回の制度は、棋士と囲碁ファンとのつながりをさらに強化し、囲碁をより身近なものにすることが目的です。「囲碁を学びたい」「棋士と対局してみたい」といったファンの声がある一方、棋士は公式戦の日程などに追われ、普及活動に十分な時間を確保することが難しい状況でした。
そこで、棋士が一定期間「普及の現場」に腰を据えて活動できる環境を整え、単に囲碁を打つプロではなく、「囲碁を学ぶ人を助けるプロ」としての役割を担ってもらうことを目指しています。
囲碁教室からオンライン講座、SNSまで幅広く活動
制度を利用する棋士は、申請と審査を経たうえで、普及活動に専念することができます。活動内容は非常に幅広く、例えば以下のような取り組みが想定されています。
・囲碁教室の立ち上げ
・幼稚園や学校での囲碁授業
・企業などでの囲碁研修
・囲碁イベントの企画・運営
・支部や地域団体との連携
・オンライン講座
・SNSでの情報発信
・講演や執筆
・囲碁指導者へのコーチング
ファンにとっても棋士と接する機会が増加
日本棋院は、この制度によって囲碁ファンにも大きなメリットがあるとしています。
SNSでの棋士による発信やオンライン講座が増えれば、これまで以上に棋士と接する機会が増える可能性があります。
また、新しい囲碁教室や講座が開設されたり、既存の教室がさらに充実したりすることで、囲碁を始めるきっかけも増えていきます。
特に、これまで棋士と直接触れ合う機会が少なかった地域では、棋士が現地で普及活動を行うことで、囲碁ファンとの距離がより近くなることが期待されています。
棋士にとっても新たな活躍の場に
棋士側にもメリットがあります。
普及休場中は公式戦の日程に左右されることなく、普及活動に集中できます。また、現役棋士という肩書きを維持したまま活動できるほか、普及休場中にも普及手当が支給されます。
さらに、普及活動を通じて新たな収入につながる可能性もあります。
棋士にとって、これまでとは異なる形で自身の経験や知識をファンに還元する、新しい活躍の場となりそうです。
「囲碁を打つプロ」から「学びを助けるプロ」へ
特に重要なのが、棋士自身の「教える力」やコミュニケーション能力を高めることです。棋士は囲碁を打つプロではありますが、必ずしも囲碁を教えるプロとは限りません。
学習者の年齢や棋力によって適した指導方法は異なり、AIなど新しい囲碁知識への対応も求められます。
また、指導の際には学習者のモチベーションを下げないコミュニケーションも重要になります。
日本棋院は、単に棋力を評価するだけではなく、学習者が「もっと囲碁を学びたい」と思えるような指導力を身につけることが必要だとしています。
制度は3年後に見直しへ
「普及休場制度」はスタートしたばかりの制度です。日本棋院では、今後実際に制度を利用する棋士や囲碁ファンから意見を集め、3年後をめどに制度を見直す予定です。地域の囲碁組織との連携やオンライン活動への支援、囲碁ファン同士のコミュニティ形成など、制度をより実効性のあるものにするための環境整備も課題となります。
囲碁界の未来を支える新たな取り組み
日本棋院は、「普及休場制度」を棋士の活躍の場を広げるだけでなく、囲碁ファンの学びの機会を豊かにするための新しい仕組みと位置づけています。
棋士が普及活動により多くの時間を使うことで、囲碁教室やイベント、オンライン講座、SNSなど、ファンが囲碁に触れる機会がさらに増えていくことが期待されます。
今回の制度が、棋士とファンの距離を縮め、囲碁人口の拡大や新たなファンの獲得につながるのか。
日本棋院が進める経営改革の中でも、今後の囲碁界に大きな影響を与える取り組みの一つとして注目されます。